10月の二十四節季ー寒露ー 後編

こんにちわ。寒気がより深くなってしまいましたね。

これを書いている間にもう次の二十四節季になってしまいましたが、とても綺麗な詩なので是非ご紹介させて頂きます。

桂香清小院

桂香 小院に清く

蟲語近匡床

蟲の語り 匡床に近し

自臥滄州隠

自ら臥す 滄州の隠

愈憎世路忙

いよいよ憎む 世路の忙しきを

もくせいの花の香が漂って 私の小さい庭は清らかになる

歌い語らう虫の声が匡(しかく)の私の寝床に近づいてくる。

隠者が住むという水辺の里の滄州 人里離れた三山の荘園で一人自ら臥せっていると

世の人々の世渡りの路は なんて忙しないことかと いよいよ憎悪がわいてくる

詩の終わりに憎悪という言葉が出てくるのがなかなかインパクトのある詩ですね。

この詩を書いた人は姚汝循という明代という日本の戦国末期くらいの方で、22歳で科挙の試験に受かるほどの秀才でしたが、能力はあっても出世は出来なかったようです。

結局彼は地元の南京にかえって自然を愛する文人らと詩文を作ったり、音楽を楽しんだりして人生を過ごしました。

年を重ねてからは塾を開き、教育にも力を注いだようです。

彼の人生は日本の戦国と違い、平和な時代だったようですね。

上の画像は南京の三山です。

現代と違い、明の時代は世界的な寒冷期にありました。今でも明清小氷期と言われています。

さてこの詩で描かれている季節の美について紹介していきましょう。

水雲の卿 これは南京の霧深い高山と川の様子ですね

楓千樹は楓によく似たフウという樹です。形もよく似ていて日本人が長く楓と誤解していたことで有名な樹です。

桂(かつら)は誤解されやすいですが、かつらの木ではなく木犀の樹です。

中国では菊と共に寒露の節気を代表する花木ですね。

桂の花は寒露の季節にはその香りで街を包み人々の心を落ち着けます。

蟲語近匡床

蟲は秋のコオロギのことです。

コオロギは寒露の時期に盛んに鳴きます。

さてこの詩に出てくる季節の特徴である 

1、紅葉した何千本の楓の樹

2、渡り鳥の雁が列を作って飛んでいく様子

3、香りを放つ桂

4、コオロギの鳴き声

とこれらに関する詩ですが、作者の背景を考えればこの詩にはもう一つの意味があります。

現代でいうところの役人をしていた著者。

その仕事からくるストレスは尋常ならざるものがあったでしょう。

そしてそのすべてを長江に投げ捨て、故郷の南京の自然を目の当たりにしている著者の心に浮かぶのは、しかし目の前の自然ではなくかつての都での忙しい日々でした。

ですが、これこそ人間の業であり、面白い所ではないでしょうか?

日本の短歌であれば、秋の夜長に読む詩の結びは心に思う女性の姿かもしれませんが、明朝の中国詩には中々そういった詩は出てきません。

皆さんも忙しい日の終わりに自然の声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか?

もし忙しすぎる日々の中で不調がありましたら、当院までご連絡お待ちしております。

石尾夏海

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