【秋の食養生】旬の「柿」は天然の薬箱?石田三成の逸話と東洋医学から学ぶ上手な食べ方|横浜明堂鍼灸院

11月に入り、朝晩の空気がきりりと冷え込んできました。
昨日、妻の母から秋の味覚である「柿」がたくさん届きました。艶やかに実った橙色を眺めるだけで、晩秋の深まりを感じます。 柿は日本各地で親しまれ、古くから庭木としてもよく育ち、この季節には毎日のように食卓に並ぶ身近な果物です。
「柿が赤くなれば医者が青くなる」ということわざがあるほど栄養価が高い柿ですが、実は東洋医学(食養生)の視点で見ると、非常に理にかなった効能と、知っておくべき注意点があります。
今回は、戦国武将・石田三成の有名な逸話とともに、秋の体を健やかに保つ柿の養生法をご紹介します。
石田三成が処刑直前に「柿」を断った理由
歴史好きの間でよく知られている、石田三成と柿にまつわる有名な逸話があります。
関ヶ原の戦いに敗れ、京都の六条河原へ引き立てられる途中、喉の渇きを覚えた三成は警護の兵に「白湯を所望したい」と頼みました。 兵が「湯はないが、代わりに柿がある。これを食え」と干し柿を差し出すと、三成はこう答えて拒んだと言われています。
「柿は痰(たん)の毒だから、食べない」
これを聞いた兵は「まもなく首をはねられる身でありながら、今さら養生して何になるのだ」とあざ笑いました。すると三成は凛としてこう返したそうです。 「大志を抱く者は、たとえ最後の瞬間であっても命を惜しみ、本望を遂げようとするものだ」
三成は処刑の直前、有名な辞世の句を残しています。
「契りあらば 六の巷(ちまた)に まてしばし おくれ先立つ 事はありとも」
(あの世へ行く道で少し待っていてくれ。先に逝くか後になるかの違いはあっても、縁があるならば必ずまた会おう)
この最期の瞬間まで己の信念を貫いた三成の言葉通り、当時の医学において柿は「痰を生じさせやすい」「体を冷やす」ものとして知られていました。三成は最後まで自らの身体を整え、武士としての矜持を保とうとしたのです。
東洋医学から見る「柿」の優れた効能
三成のエピソードでは「痰の毒」として用心された柿ですが、乾燥しやすい秋の体にとって、適量を正しく摂れば非常に優れた薬効を発揮します。
1. 「肺」を潤し、喉の乾燥や咳を鎮める
東洋医学では、柿の性質は「甘・渋、寒」とされ、五臓の「肺」と「脾・胃」に働きかけます。 秋は空気が乾燥し、呼吸器(肺)を傷めやすい季節です。柿のみずみずしい果汁は体に潤いを与え(生津・潤肺)、カサつく喉の渇きを癒やし、空咳を鎮める手助けをしてくれます。
2. 余分な熱を冷まし、二日酔いを和らげる
柿には体の熱を冷ます「清熱(せいねつ)」の働きがあります。また、現代の栄養学でもアルコールの分解を促すタンニンやビタミンC、カリウムが豊富に含まれているため、お酒を飲みすぎた翌朝の熱っぽさや二日酔い対策としても重宝されます。
3. 「柿のヘタ」はしゃっくりを止める生薬
柿の実だけでなく、ヘタの部分も「柿蒂(してい)」という立派な生薬として漢方薬(柿蒂湯など)に使われています。胃の気が逆流して起こる「頑固なしゃっくり」を止める特効薬として、古来重宝されてきました。
柿を美味しく楽しむための「2つの注意点」
優れた薬効を持つ一方で、三成が警戒したように、柿には強い「寒性(体を冷やす力)」があります。美味しく安全に食べるために、次の点に気をつけてみてください。
- 冷え性の方・胃腸が弱い方は「食べすぎ」に注意柿を一度に何個も食べると、胃腸が冷えてお腹を下したり、消化不良を起こしやすくなります。1日半分〜1個程度を目安に、よく噛んで味わうのが適量です。
- 体を冷やしたくない時は「温める食材」と合わせる冷えが気になる方は、シナモンを軽く振って焼き柿にしたり、温かいほうじ茶や生姜湯と一緒にいただくのがおすすめです。また、水分が抜けて甘みが凝縮した「干し柿」は、生の柿よりも冷やす性質が和らぎ、胃腸をいたわる養生食になります。
旬の恵みを賢くいただき、冬支度を
秋の実りは、その季節に私たちの身体が必要としている力を自然と届けてくれます。
乾燥する喉を潤しつつ、体を冷やしすぎないよう上手に付き合う——これこそが昔から受け継がれてきた「医食同源」の知恵です。
いただきものの美味しい柿をありがたく味わいながら、寒さに向かう季節の変わり目を元気に乗り切っていきましょう。

