日本の原風景「芒種」と、海外で気づいた望郷の念

おはようございます。今日のブログは鍼灸とは直接関係ないのですが、季節のうつろいについてお話ししたいと思います。

今日で6月2日。あと数日で6月5日・6日になりますね。この6月5日頃は、二十四節気でいうと「芒種(ぼうしゅ)」という季節に入ります。

字面だけ見ると少し寂しい印象を受けるかもしれませんが、この「芒(ぼう)」というのは、稲や麦などの植物の穂の先にある、独特のトゲのような毛(のぎ)のことです。「種(しゅ)」はもちろん種(シード)のこと。つまり、稲作の「田植え」の時期を表す言葉なんです。ニュースなどでも「田植えの時期です」といって、様々な映像を目にする機会が多いと思います。

日本人にとって「米作り」や「稲作」というのは、直接農業に関わっていない人間にとっても、非常にノスタルジックで季節を感じるイベントですよね。

実は私、以前は豪華客船の鍼灸師として働いていました。船のルートに合わせて、夏はアラスカなどの涼しい所にいて、冬は寒さを避けてカリブ海にいるような生活。なので私、20代後半は「日本の冬」をほぼ知らずに過ごしたんです。

人間って不思議なもので、そうなると、あの冬の寒い時期に食べる「コンビニのおでん」の味が、今ものすごく美味しく感じるんですよね。おつゆがしみしみの大根の上に味噌をちょっと垂らして、噛んだ時に大根の中からおでんの汁がジュワッと溢れ出るあの旨み。しみしみのゆで卵を食べながら、口の中で黄身のパサパサ感とおでんの汁が一緒になった時のなんとも言えないあの旨み……!

こういったものが、たまらなく美味しく感じられます。やっぱりその4年間、日本の季節の楽しみから離れていたからだろうな、と思います。

こういう故郷を想う心は、「望郷の念」と言うんでしょうね。海外に出て初めて知った感覚です。

だからこそ、「芒種」の季節に田植えの映像を見た時に感じるなんとも言えない感覚は、私にとって不思議と嬉しいものなんです。直接的な「幸せ」とはまた違うんですけど、「昔から変わらないものが、今でも変わらないままそこにある」という安心感のようなものです。

ここで、そんな田植えの情景を詠んだ大好きな和歌を一つ紹介させてください。(なんだかただの日記みたいになってしまいましたが笑)

あしひきの 山の木末(こぬれ)の ほととぎす 田植(たうへ)の早乙女(さをとめ) 呼び響(とよ)もすも

山の木々の梢で、初夏を告げる鳥であるホトトギスが鳴いている。その声はまるで、田植えをしている早乙女(若い女性)たちに「頑張って!」と呼びかけるように、辺り一面に響き渡っている――。

この情景の感覚を、どうしても皆さんと共有したくて。山の中でホトトギスが鳴いて、その声が田植えをしている女性たちにフワーッと伝わっていく様子が、すごく視覚的に頭に浮かぶんですよね。これって多分、私が日本人として、この原風景を感覚的に知っているからだと思うんです。

これから暑くて気が滅入ることも多い時期に入りますが、この美しい季節を皆さんと一緒に楽しんでいけたら嬉しいです。